オンラインジャーナル

Vol.5 No.1

原著論文

RJ-05004: Vol.5 No.1 pp.12-22
福島第一原子力発電所事故後の中学校における放射線教育を取り巻く課題
野戸 結花・小倉 能理子・西沢 義子・細川 洋一郎 五十嵐 世津子・笹竹 ひかる・扇野 綾子
弘前大学大学院保健学研究科
キーワード:福島第一原子力発電所事故、中学校、放射線教育
福島第一原子力発電所事故により避難先で学校教育を再開している中学校における放射線教育の現状と課題を明らかにする目的で中学校教諭など5名にインタビュー調査を行い、テキストマイニング法で分析した。結果、生徒の現状としては放射線の負のイメージは薄れてきているが、正しく恐れるのに必要な知識は十分でないと捉えていた。そして、有効な教育のためには、具体的なデータを提示して数値を意識させる、学年進行に合わせ計画的に教育内容を組み立てるなどの考えをもっていた。一方、教諭自身が教育に必要な知識、特に放射線の人体影響に関する知識が不足していると感じていること、個々の保護者の反応に配慮して安全・危険の判断を伴う教育を行うことへの躊躇があることが明らかになった。課題への対策の一つとして、教諭の放射線に関する知識の獲得を支援する目的で小人数制の学習会を開催した結果、学習項目の理解度は上昇し学習効果が得られた。教諭自身が不確かであった知識を確認できたことで、自信をもって子どもへの教育に活用することができると考える。
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